「統計学とプログラミングを一緒に勉強したいけれど,どの本を選べばいいのかわからない」,「PythonやRの入門書を読んだあと,データ分析にどうつなげればいいのかわからない」なんて悩みをもつ人は多いのではないでしょうか。PythonやRは,統計学やデータサイエンスを学ぶうえで便利な道具です。しかし,プログラミングの文法だけを勉強しても統計分析や機械学習ができるようになるわけではありません。逆に,統計学の理論だけを勉強しても,実際のデータを扱う経験がなければ,学んだ内容をどのように活用すればよいのかイメージしにくいですよね。
そこで今回は,2025年以降に発売された書籍の中から,プログラミングと統計学・データサイエンスを結びつけて学べる次の3冊を紹介します。
①『Python×データサイエンス 入門から実践まで』
(池原翔太・広瀬啓雄・山本芳人・宇井隆晴,近代科学社Digital)
②『ガイダンス Pythonによる確率統計』
(石谷謙介,サイエンス社)
③『Rによる統計データ解析』
(小池祐太・村田昇・吉田朋広,東京大学出版会)
3冊ともプログラミングとデータ分析を扱っていますが,目指しているところは大きく異なります。この記事では,それぞれの内容や特徴を比較し,どのような人に向いているのかを説明します。
おすすめの3冊
最初に,3冊の違いを簡単にまとめておきましょう。
| 書籍 | 言語 | 前提知識 | カバー範囲 | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|
| Python×データサイエンス 入門から実践まで | Python | プログラミング未経験でもOK | Pythonの文法から回帰・分類・クラスタリング・ニューラルネットワークまで | 手を動かして機械学習を実装したい人 |
| ガイダンス Pythonによる確率統計 | Python | 高校数学 | 確率・統計の理論+モンテカルロ法によるシミュレーション | 統計学の理論をPythonで確かめたい人 |
| Rによる統計データ解析 | R | 統計検定®2級程度 | Rの基本から推定・検定・分散分析・回帰・主成分分析・判別分析・時系列解析まで | Rで本格的な統計解析を体系的に学びたい人 |
それでは,順番に見ていきましょう。
【おすすめ①】Python×データサイエンス 入門から実践まで
池原翔太・広瀬啓雄・山本芳人・宇井隆晴の4氏による共著で,2025年6月に近代科学社Digitalから発売された書籍です。本書の最大の特徴は,Pythonをほとんど使ったことがない人を対象として,Pythonの基本文法から機械学習までを一冊で扱っていることです。
まず,変数,データ型,条件分岐,くり返し,リスト,関数などのPythonの基本を学んでいきますが,Google Colaboratoryを利用する前提となっており,環境構築の心配をする必要はありません。さらに,NumPy,Matplotlib,pandasの使い方を学んだ上で,回帰,分類,クラスタリング,次元削減の実装ができるように構成されています。
なお,本書は,リッジ回帰,Lasso回帰,SVM,ニューラルネットワークなど,統計検定®準1級の内容の一部を含んでいますが,統計学の理論が体系的に説明されているわけではありません。あくまで,これらの手法をPythonを使って実装できるようになることを目指す人にオススメです。
目次
第1章 本書の概要
第2章 Pythonの基礎
第3章 制御構文
第4章 リスト・タプル・集合・辞書
第5章 関数・オブジェクト指向
第6章 ライブラリの利用方法
第7章 Pandasの使い方
第8章 データサイエンスプロジェクト
第9章 回帰問題
第10章 分類モデル
第11章 クラスタリングと特徴量の次元削減
第12章 ニューラルネットワーク
・Pythonの基本文法から学べる
・Google Colaboratoryを利用する前提となっており,環境構築の心配がない
・データ分析に必要な主要ライブラリを学べる
・回帰,分類に関する様々な手法が取り上げられている

Pythonの文法から機械学習までを一冊で学びたい人に向いている本です。Pythonを動かし,いろいろな機械学習モデルを試すのに適しています。
【おすすめ②】ガイダンス Pythonによる確率統計
石谷謙介氏による著書で,2026年5月にサイエンス社から発売されました。本書の副題は「基礎から学ぶモンテカルロ法」となっており,2021年12月に発売された同じ著者による『ガイダンス 確率統計』(以下,前著と呼ぶ)の内容を基礎として,モンテカルロ・シミュレーションを実行するPythonコードと,理論値とシミュレーション結果を比較する内容を加えたのが本書です。ただし,Pythonによるプログラミングの解説書ではないため,Pythonの基本を知りたい人は,はじめに【おすすめ①】で紹介した書籍などを読んでください。
前著と同じく,本書は高校数学の知識を前提として,推定・検定等の理論をイチから組み立てるというポリシーのもとに書かれたものです。理論的な解説は2冊ともほとんど共通していますが,前著では簡便法で求めていた母分散の両側検定の棄却域を,本書では二分法を用いて尤度原理と整合する形で厳密に導いているといった工夫等が凝らされています。
統計検定®との関連に触れておくと,前著,本書ともに,2級の学習では見過ごされがちな論理を一つひとつ組み上げていくような内容になっています。そのため,2級の学習者の場合,前著の理論的な解説についていくことが難しいと感じる読者もいたと思われます。そこで本書では,Pythonプログラミングによるシミュレーションが理論解説の理解の助けになるように設計されています。また,本書,前著ともに,準1級学習者が演習問題を通して確率分布の理解を深めたり,将来的に1級を目指す人が統計の数学的ロジックを自分のものにするために読むという用途にも適しています。
目次
第1章 事象と確率
第2章 確率変数とその分布
第3章 多変量確率変数
第4章 データの分析
第5章 大数の法則と中心極限定理
第6章 統計的推定
第7章 統計的仮説検定
付録A 本書で必要な数学上の話題
付録B 問と演習問題の解答
付録C 付表
・理論値とシミュレーション結果を比較できる
・大数の法則と中心極限定理を視覚的に確認できる
・理論的な解説だけでも読み進められる
・必要な数学的知識は巻末の付録にまとめられている
・掲載されたサンプルコードは出版社HPからダウンロードできる

「公式は知っているけれど,何を意味しているのか実感できない」という人は,本書を通して,Pythonによるシミュレーションをやってみましょう!
なお,本書のR版も同時に出版されています。
【おすすめ③】Rによる統計データ解析
小池祐太・村田昇・吉田朋広の3氏による共著で,2025年8月に東京大学出版会から発売されました。本書はRの基本操作から学べるように構成されており,データの加工や可視化,シミュレーションを学んだあと,確率分布,推定,検定へと進みます。統計学の伝統的な学習順に沿って,Rの使い方を学んでいくことができます。
また,統計検定®との関連で言うと,最尤法,多変量正規分布,主成分分析,判別分析,時系列解析といった準1級の内容の一部を含んでいます。ただ,統計学の説明は淡々と進んでいくので,本書だけでこれらの理論を理解していける学習者は限定的だと思われます。あくまで,Rによる統計解析の実行をメインで学びたい人にオススメです。
目次
第1章 Rの基本的な操作
第2章 データの加工,入出力と整理
第3章 データのプロット
第4章 シミュレーションと極限定理
第5章 確率分布
第6章 点推定
第7章 区間推定
第8章 検定
第9章 分散分析
第10章 回帰分析
第11章 主成分分析
第12章 判別分析
第13章 時系列解析
付録A 数学的補遺
・Rの基本操作から学べる
・データの加工と可視化を丁寧に扱っている
・シミュレーションを使って統計理論を学べる
・多変量解析と時系列解析まで学べる
・掲載されたサンプルコードはサポートページからダウンロードできる

Rによる統計解析をはじめて学ぶ人でも,伝統的な統計学の理論体系に沿って,Rの操作を順番に身につけていくことができるよ!
まとめ
ここまで紹介した3冊はどれもプログラミングとデータ分析を結びつけた本ですが,得意分野が異なります。
Pythonと機械学習を学びたい人には,『Python×データサイエンス 入門から実践まで』がオススメです。Pythonの基本文法からはじめ,pandasによるデータ処理,回帰,分類,クラスタリング,ニューラルネットワークまで進み,Pythonを使って予測モデルを作れるところまで到達できます。
Pythonで確率統計を理解したい人には,『ガイダンス Pythonによる確率統計』がオススメです。確率現象,確率分布,大数の法則,中心極限定理,推定,検定をモンテカルロ・シミュレーションによって確認します。「統計学の理論をPythonで確かめながら理解したい」という人に向いています。
Rによる統計分析を体系的に学びたい人には,『Rによる統計データ解析』がオススメです。Rの基本操作からはじめて,推定・検定,分散分析,回帰分析,主成分分析,判別分析,時系列解析までをRで実行し,その結果を解釈できるレベルを目指せます。
PythonとRのどちらが優れているかを一概に決めることはできません。今回紹介した3冊の中では,機械学習への応用を重視するならPythonの本,伝統的な統計分析を体系的に学ぶならRの本が選びやすいでしょう。どの本を選ぶ場合でも,掲載されているコードを眺めるだけではなく,実際にパソコンで実行してみることが大切です。数値や条件を少し変えながら試すことで,統計学やデータサイエンスへの理解が深まるでしょう。






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